健康住宅を考える その2


平成10年度日本木材青壮年団体連合会健康住宅研究委員会副委員長

(株)ムラモト  村本喜義

 

今までのキーワード

シックハウス症候群 V.O.C ホルムアルデヒド ダイオキシン 塩化ビニール 環境ホルモン 高断熱・高気密 計画換気

 

これからのキーワード

自然 天然 潤い 癒し 四季 回帰 育む 『木を使う、気を遣う』 破棄コスト


 

健康住宅問題を考えるようになってから早くも1年以上が経ってしまいました。

最初の頃の化学物質などの薬害的な問題も、最近になって大手ハウスメーカーを中心に、F1ベニヤやノンホルマリン商品といったものが出てきて、シックハウス症候群などのような問題点は少なくなりつつあるところだと思います。反対に地場のハウスメーカーや、工務店の「V.O.C」に対する考え方の遅れが目立ちます。

 

環境ホルモンという文字が新聞紙上をにぎわすようになり、「人間の健康を語るだけではもうだめだ」という思いがふつふつと湧いてきます。

大げさになるかもしれませんが、21世紀を迎えるにあたって、地球的環境保護や、地球上の生き物の子孫の問題を、現在生きているわれわれ個人個人がどのように考え、行動していくべきか、何か一つの指標が示せればと思っています。

 

人間が、快適さを追求するのはある程度しょうがないことだとは思いますが、快適さを追求することが、人間が人間として、地球に生きる生き物として、本当に必要なのかを考えることが必要だと思います。快適な環境の中に暮らすことが、人間にとって暮らしやすく、健康であるという考え方は、ある一面しか問題を捕らえていないばかりか、非常に危険な考え方だと思います。

 

よりベターな選択を繰り返すことによってのみ、ベストな住宅が造られるのです。


そして、よりベターな選択とは、住宅の質の向上と、そこに住む家族の肉体的健康、精神的健康によってのベターな選択ということに他ならないのです。今の木造住宅の建てられ方を見ていると、本当に施主のための家造りなのか、企業が利益追求だけのための手段としての家造りなのか一目瞭然です。

(われわれは業界の内側から見ているのではっきりわかります。)施工者や、納入業者にとっての、自己都合的な気持ちが先行したような住宅造りは存在してはいけないと思います。(企業の正しいもうけ方はちゃんとある)

 

 

木造住宅の本当のよさを一般の方々に伝えていけるのは、木造住宅の設計士、地場の工務店、大工さん、われわれのような木材販売業者だけです。

私どもが、木造住宅を後世に残していける唯一の業種なのですから、日々襟を正して、商品だけではなく財産づくり(資産として、健康として、思い出づくりとして)のお手伝いをさせていただいているのだということを忘れずにお施主様にも接していきたいものです。

 

昔、近江商人は『売り手良し、買い手良し、世間に良し』という理念がありました。

『三方良し』という考え方だそうで、商いを売り手と買い手だけではなく世間にとっても都合の良いものにしなければいけないとする考え方で、現代にも通ずる理念だと思います。


 

さいごに、ここが非常に大事なところなのですが、良質な住宅の定義というものは、『限られた予算の中で、適材適所の材料を、手抜きなく、そこに住む家族のために造り上げていく住宅』だと思っているのですが、現在建てられている住宅にどれだけこの定義に沿って建てられている木造住宅があるでしょうか?

よく『予算がないから』といって住宅の仕様を簡単に落とす住宅がありますがここはひとつ、『だめなものはだめ』といえる勇気と気概を持ちたいものです。

 

『良質=良心』非常に単純かもしれませんが、非常に奥が深いと思います。

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